チームメイトからのお願い





部活帰りの電車内。
セナがかっくりと頭を垂れた。
結構な勢いがついていたからか、パッと顔が上がる。
目を擦る仕種がいかにも鈍い。
しかし、努力むなしく段々まぶたは閉じていく。
電車の揺れに徐々に重心が傾き始める。
ポスンと落ち着いたセナの頭は隣のヒル魔にジャストフィット。
ヒル魔の肩で眠るセナの安心しきった顔。
それに細められたヒル魔の目元。
そんな光景にチームメイトの視線がそれる。
セナだけ見てれば癒し系。
だが、ヒル魔込みだと変わってくるのだから仕方ない。
見た目は後輩が先輩にもたれてるだけ。
なのに、醸す空気がなんだかほんのりピンクっぽい。
「いたたまれない」とはこのことか。
あと少しの我慢と皆が心で唱えること数駅。
降りる駅に近付くと、新な試練が待ち受けていた。
起こすのはいいよ?
いいけどね?
起こし方が「あごをくすぐる」ってどうよ?!
猫なの? セナは子猫ちゃんなの?
あんたボールだってそんなに優しく扱わないだろ!
あぁ、見てるこっちが恥ずかしい…。
明日はチームメイト一同からお願いしよう。
『寝てもいいけど、のど声出すのは勘弁して下さい』
目は反らせても耳は塞げないからね…。






H24.4.2〜H25.4.1 まで拍手に使用