「指切りって怖いですよね」 
ソファーでテレビを見ていたセナが突然そんな事を言い出した。 
「は?」 
セナが見ているテレビに目をやると、ドラマ何かで子供が指切りをして分かれて行くシーンだった。 
普通こうゆう場面は微笑ましいというんじゃなかろうか? 
「だって嘘ついたら針を千本も飲まないといけないんですよ? それに『げんまん』って『げんこつで1万回打たれる』って意味なんですって」 
その熱心さを勉強に向ければ、試験前はもう少し楽になるだろうにとヒル魔はこめかみを押さえた。 
「嘘つかなきゃいいだろうが」 
「・・・結果的に嘘になっちゃうかもしれないし」 
さっきまで冗談のように笑って言っていたのに、今うつむいた横顔に浮かぶのは悲しさか悔しさか・・・ 
今までに守れなかった約束や守られなかった約束がどれだけあったのだろう。 
昔の記憶に沈んでいるセナの耳元に顔を寄せる。 
「こっち向けよセナ」 
耳にかかる息と声にセナの全身が跳ねた。 
とっさに耳を押さえて横にずれようとするが、ゆったり目とはいえ所詮二人がけのソファー。すぐに詰め寄られてしまう。 
真っ赤な顔で震える様子を見ると、どうやら先程の声が腰にキているらしい。 
震える様がなんとも可愛らしくていつもならこのままいじり倒すのだが、代わりに耳を抑えた手をそっと外させて指を絡める。 
多少覚悟していたらしいセナが不思議そうに見てる目の前で絡められた指がほどかれたが、小指だけがしっかりと絡まったままだった。 
「・・・何の約束をするんですか」 
震える声の響きに混じるのは不安と期待。 
「ずっと一緒にいてやるよ、約束だ」 
「守れないかもしれませんよ?」 
「俺が?テメーが?」 
分からないとばかりに無言のままに首を振るセナ。 
「テメーが離れるなら俺が連れ戻す。俺が離れるならお前がしがみつけばいい」 
「僕がヒル魔さんを止められるわけないじゃないですか・・・」 
にじんだ涙が一筋頬を伝っていく。しっかりと絡めた指を目の前に掲げた。 
「テメーにしかできねーんだよ」 
泣き笑いをしながらセナは手に額を当てた。 
「僕も、ずっと一緒にいます。約束します・・・」 
 
             
             
             
             
                                                 Fin. 
             
                                           2007. 7. 13  
             
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