※コピー本(雲雀が先天女体で家族ネタ)と同一設定上のお話です。
父親似の息子(兄)と母親似の娘(妹)が出てきます。
苦手な方はbackでお戻り下さい。





『愛妻の日』


 「恭弥、1月31日は『愛妻の日』だって知ってる?」
「突然なんなの」
にこやかに話しだしたディーノへの恭弥はそっけない返事を返す。
「日本の取引先相手と電話してたらそんな話が出たからさ」
日本ってホントに『なんとかの日』ってのが好きだな〜と笑うディーノは純粋におもしろがっているようだ。
家族そろっての夕食も済み、今はくつろぎの時間。ルカはディーノの隣に座り、手のタトゥーを不思議そうにながめ、リーチャは恭弥にもらった千代紙をラグに広げ目をキラキラさせている。
「アイサイってなに?」
ディーノの手を握りしめたままのルカが耳慣れない日本語の単語に首をかしげる。
「パパがマンマを大好きってことかな」
「俺もマンマ大好きだよ!」
「そっかそっか」
「「マンマ可愛いもん(な)」」
良く似たキラキラがそろって頷いている。クルッと恭弥に向かい、笑いかけてくるタイミングまでそっくりだ。
息があっているだけのか、それとも遺伝子のなせる業なのか。どちらにしてもキラキラが倍増しで非常に眩しい。
見たいのに目がツラいなと困っている恭弥の膝がほんのりと暖かくなった。
見ると、千代紙に夢中になっていたはずの娘がその小さな手を恭弥の膝に置いている。
「抱っこ?」
ねだれたのかと手を差しのべる。
すると、すりっとその手に顔を乗せて、「リーチャもマンマだいすきよ」とほにゃりと微笑んできた。
(……可愛いっ!!!)
言葉にならないほどの胸キュンに一瞬息が止まった気がした恭弥だ。
思いのままに抱き寄せて「僕もひかりが大好きだよ」と告げる。
「ねぇマンマ、マンマ!俺は?」
「もちろんひかるも大好きだよ」
ディーノの横から聞いてきたルカに手を伸ばして頬を撫でる。えへへと満足げにディーノを見て「大好きだって!」と嬉しそうに笑う息子も可愛くて仕方ない。
「愛されてるな、恭弥」
そう言ったディーノは自分のことのように喜んでいる。それがとてもくすぐったくて、でも心地好い。
恭弥も何か返したい。でもどんな言葉も足りない気がして、胸のうちで言葉を探していたら。
「あ、でも一番恭弥を愛してるのは俺だからな!」
とどめとばかりにウインク付きでされた宣言されてしまった。
(これだからイタリア人は…)
こんな言葉をさらりと口に出来るディーノを、たまに、ほんの少しだけ、羨ましく思うこともある。
『僕もあなたを愛してるよ』
簡単な言葉だ。ディーノも(言ってくれねーの?)とばかりに恭弥を見つめてくる。
恭弥がそう返せばディーノは大喜びするだろう。出会った頃なら口にするのも恥ずかしくて言えなかった言葉も、今の恭弥なら言える。
でも、ただそう返すのでは面白くない。
じっと恭弥の言葉を待つディーノに冷たい眼差しを投げた。
「僕を一番愛してる?そんな当然でしょ」
恭弥の返事に目を丸くするディーノ。どうやら予想を外せたらしい。
しかし、口をついたセリフは嘘偽りない恭弥の本音だ。
「そうじゃないディーノなんて、僕は好きなった覚えはないからね」
自分を一番にしないディーノなどディーノではない。キッパリと言い切ってやった。
「……あぁもうお前は〜〜〜!」
うなり声をあげられても、にらまれても、全然全く怖くもなんともない。何故なら。
「パパ、おかおがまっかよ?あついの?」
リーチャが指摘するほどディーノの顔は赤いからだ。
「う〜んんと??」
両親のやりとりを理解できないルカが首をひねっているが、まだこの辺りの説明は不要だろう。「マンマもパパが好きってことさ」の一言で「そうなんだ!」と笑顔を見せた。
その笑顔に頷いて、「そう言えば今日はなんの日だって言ってたっけ?」と恭弥はディーノに聞いてみた。
「…我が家では今日も明日もあさっても、これからもずーっと『愛妻の日』とさせていただきます」
神妙に申告するディーノに「よろしい」とニッコリ笑う恭弥だった。






                                     Fin.

                                2014 .2. 4




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