『 おみくじ』




「あ、大吉だ!」
広げた紙に書かれた文字の幸先良さに喜んだ。
隣に立つ人に見えるように目の高さに持ち上げる。
一緒に喜んでくれると思い見上げると、そこにあったのは予想外の顔だった。
「…どーしてそんな渋い顔なんですか」
確かに、初詣に来て「おみくじ引きたい」と言ったセナにヒル魔は良い顔はしなかった。でも大吉だ。1番だ。もうちょっと違う顔でもバチは当たらないだろうに。
口には出さなかったが、セナの言いたいことは伝わったらしい。
「テメーがそんなもん引くからだろーが」
「そんなもん…大吉をそんなもん…」
「ちっとは考えてみやがれ」
大吉だ。1番だ。もう上は無い。つまり、気を抜けば落ちるしかないのだ。
「もう先がない大吉なんかより、吉あたりではい上がる位がいーじゃねーか」
それもそうかも…
急に手の中のありがたみが失せていく。
「ま、大吉だろうが大凶だろうが、やることやらなきゃ泣きを見るのはテメーだってこった」
「でも大凶はヤです」
ふっと笑いが込み上げる。
そうだった。いつも自分にできるのは頑張るだけだ。
「じゃあ来年は吉にします」
「何が出るか決めてんのかよ」
「あ、そうか」
神頼みは分からないからドキドキするのに、分かっていてはする意味が無い。
「うーん、どうしましょう?」
「…バカだろ、テメー」




                                2010. 1. 1

                      Fin.




なんか中途半端ですが気にしない!
でも大吉以下の幸運の順番は
寺社仏閣によりそれぞれ違うそうです。
(テレビでやってた)
大大吉引いた友達もいたしね。
大大凶もあるんだっけ?
セナで無くとも引きたくないですよねー。

今年もまったり更新ですが、
『Crawford』をよろしくお願い致します。