星に願いを
「最近の七夕って、雨ばっかりですよね」
手に入れてきた笹を手に、窓の外を見つめてため息なんぞつきやがる。笹なんて、いったいこの街中のどこから見つけてきたんだか。
「僕が小さい頃ってもうちょっと晴れてる日もあったと思うんですけど」
いまだって小さいじゃねーかとからかえば、まるっこいホッペタふくらまして、やっとコッチを見た。
「小さいって身長のことじゃなくって年の事ですよ!」
そんなこたー言われなくっても分かってるっつーの。からかわれてるのが分かってねーのか、分かっていても言われずにいられないのか。ちょっと突けばいつだってムキになってかかってくる。
「小学校とかでもやりませんでした? 短冊に願い事書いて飾っておくって。クラスみんなの短冊つるしちゃうと、笹が重さで倒れそうになったりとか」
さーな、覚えちゃいねぇと返すと、予想がついていたらしい顔がなんともいえない表情を浮かべていた。
「そーですよね。ヒル魔さんが短冊つるしてるのって似合わないかも」
なら話を振るんじゃねーっつの。
「いろんな事書いたなー」
欲張りだなと笑ってやる。
「だって、願うだけなら何書いたっていいじゃないですか」
少し寂しそうな笑顔だった。
「でも書いたことはおぼえてるのに、何を願ったかは思い出せないんです。なにかひとつくらいおぼえてたっていいのに」
どーせ子供の考えるこった。大きくなりたいだの、お菓子いっぱい食べたいだの、そんなトコだろうと思っていたら、ウンウンうなって思い出そうと抱えていた頭がふとあがった。
「ひとつ、思い出しました」
思い出せたことが嬉しかったのか、口元がゆるんでいる。
「強くなりたいって書いたんです」
遠くを懐かしんでいた目が、ゆっくりと自分を見つめる。嬉しそうな、恥ずかしそうな、それでいてどこか誇らしげな。
「ヒル魔さん、僕、強くなれたと思いますか?」
嬉しそうな表情が愛しくて。
恥ずかしそうな様子が可愛らしくて。
誇らしげな口調に、胸が熱くなる。
神になんて祈らない。
願い事なんてしない。
頼るのは自分と、仲間と、そして。
いつもなら簡単に出来るはずなのに、うまく言葉が形にならない。
伸ばした腕の中にしずかに納まった体温を抱きしめる。
「ヒル魔さん、いま願い事ってありますか?」
願い事はねーよ。やりたい事ならあるがな。
「それって、すっごくヒル魔さんらしい」
クスクスと腕の中でひびく笑い声。側に置くことを望んだ唯一の。
「セナ・・・」
絶対にはなさないと自分に誓った俺のひとつ星。
Fin.
2006.7.7
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入浴中に書きたくなった七夕SSS。
自分で書いといてなんですが、
これってヒルセナですか?
ヒル魔&セナっぽいかんじ。
しかもなんだか、ヒル魔さん、甘えん坊・・・?
雑学キングなヒル魔さんが書けなかった(笑)

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