『夏祭り』
部活後の帰り道、ヒル魔さんからのメールが届いた。
『明日15時、浴衣来て全員集合』
…浴衣あったかな?
明日は休みじゃなかったっけとか、何をさせられるのかなとか、思いつかない自分に少し切なくなった僕だった。
次の日。
迎えに来てくれたモン太と一緒に学校へ。まもり姉ちゃんは浴衣にほつれが見つかってしまって、別の浴衣に大急ぎで着替え中だ。着付けに時間がかかるから先に行っててと言われモン太は目に見えてガッカリしたが、後で見れるじゃないと言うとそれもそうかとすぐに気を取り直した。
でも突然浴衣なんて、ヒル魔さん、お祭りにでも連れてってくれるのかな?
・・・まさかね(笑)
学校までの道々、すれ違った人がチラチラとこっちを見るのが分かった。モン太も会った時から気になってたみたいで、言おうか言うまいかって顔するし。
「なぁセナ、それってさ」
「だってコレしか無かったんだよ」
全部言われる前に言葉をかぶせた。僕だって気にしてるんだよ、これでも・・・
「あ、セナ君、モン太君」
「フゴッ」
「こんにちは栗田さん、小結君ももう来てたんだ」
「ちーっす。他の面子はまだ来てないんすか?」
先に来ていた2人に挨拶して部室内を覗こうとしたら、後ろからグシャグシャと髪の毛をかき混ぜられた。
「わっ!!」
「お、どこのガキンチョがまぎれ込んだかと思ったら」
「セナじゃねーか。高校生にもなってソレはねーだろ」
「黒木君、戸叶君!」
頭に手をやったのが黒木君で、戸叶君は目に付いたソレを引っ張ろうとしていた。
「やめてよ、解けたら僕じゃ結べないんだから〜」
本気で解こうとしてるわけじゃないって分かってるけど、結びなおせないのもホントだから慌てて逃げるフリをする。
「呼出した本人はまだ来てないのかよ」
十文字君が見回すように首をめぐらして言った。黒木君や戸叶君もきっちり着付けるんじゃなく少し着崩した襟元とかが妙に似合ってて。うらやましそうな僕の表情に気付いたモン太が心配そうに僕を見てるのに気付いて、なんでもないよと笑ってみせる。
「そーいや呼出しの理由聞いてっか?」
「僕も聞いてないよ。栗田さんは何か聞いてますか?」
「屋台がどうとか言ってた気がするんだけど」
やっぱり遊びじゃないんだ…けど屋台?屋台って金魚すくいとかリンゴアメとかの事だよね。ヒル魔さんなら射的かも知れないな〜。
その時話題の主がドアをガラッと開けて登場した。
「おう、揃ってるかヤロー共」
「遅くなってゴメンね」
「ヒル魔さん、雪さん」
いつものように銃火機を肩にかけたヒル魔さんは、恰好もいつもの黒の上下だった。後ろから入ってきた雪さんも私服だ。
・・・なんだ、私服でも良かったんだ・・・
「ヒル魔は浴衣じゃないの?」
栗田さんの質問はみんなの心の声でもあった。
「必要ねぇからな」
必要ないってどういう事だろう?
そう思っていたらヒル魔さんと目があって、次の瞬間ヒル魔さんが吹出してゲラゲラ笑い出した。
「どこのガキが紛れ込んだかと思ったら、テメーか糞チビ!!」
「そんなに笑わなくてもいいじゃないですか!!」
精一杯力んで怒ってみたけど、全く気にせず笑い続けるヒル魔さんに僕は涙目になってたかもしれない。僕を見て慌ててみんな(ヒル魔さん以外)が慰めてくれようとしたのは嬉しかったけど、
「気にすんなセナ!」
「そうだよセナ君、大丈夫だよ〜」
「似合ってる、フゴッ」
「高校生には見えないから安心しな」
「充分可愛いから胸を張れ」
「むしろ誘拐とかに気をつけなきゃいけねぇだろ!」
「みんな論点がずれてきてるよ?」
慰めはヒートアップしていったが、逆に内容はどんどん僕を落ち込ませていくばかりで… 「やー!遅れてゴメーン!ってセナ可愛いー!!」
追い打ちをかけるように賑やかに入ってきた鈴音がセナに駆け寄り、前に後ろにと回って眺めはじめた。
「アハーハー! もちろん浴衣だってベストドレッサー賞は僕に決まってるけどね!
「兄さんも浴衣なんだから開脚しないでったら!」
後ろでクルクルまわる夏彦を叱り飛ばすと、改めてセナに向かってニッコリ笑う。
「ヒラヒラしてて可愛いー。似合ってるよ、セナv」
そういう鈴音も可愛い柄の浴衣姿で、僕と似ているようで違う変わった帯の先には小さく鳴る鈴が揺れている。
鈴音に悪気が全く無いのは分かっている。分かっているからセナは余計にわびしいのだが…
ようやく笑いのおさまったヒル魔が涙を拭き拭き寄ってくる。
「いくら似合うっつっても、高校生にもなってその帯はねぇだろ」
セナだとて着たくて着てる訳ではないのだ。それをこんなに笑うなんてと思ったのが顔に出たのか、ますますケケケと笑われた。
最初に用意したのは別の浴衣だった。しかし、去年角帯と一緒に買ってもらったばかりのそれは、出してきたら虫に食われて見事な穴が出来ていたのだ。さすがにこれは着れないと悩むセナに、母は事もなげに「これを着ていけばいいじゃない」と出してきたのが。
「一重の浴衣に兵児帯(へこおび)ねぇ。どっから見ても小学生だな」
「へこ帯ってなーに?」
「柔らかめの生地で作ってある結びやすい帯の事だよ。巻きつけて結ぶだけだから子供用によく見かけるよね」
鈴音の疑問に雪さんがわかりやすく教えてくれてる。
そう、兵児帯って主に子供がつけてる帯なんだよ・・・
今のセナは袖も裾も微妙に足りず、また絶妙な長さがその小ささをより強調してしまうという相乗効果が発生。かくして見た目は完璧小学生、中身は一応高校生が出来上がったのである。
「嫌なら着るなよ」
「浴衣着て来いって言ったのヒル魔さんじゃないですか〜!!」
セナも制服という選択肢に傾きかけたのだが、何と言ってもヒル魔がわざわざ浴衣と指示して来たからには何かあるに違いないと思ったから。そして、着て来なかった場合を想像した時…。恐ろしい想像に青くなりかけたセナの目の前には、どんなものでも「浴衣」を着て行くしかないという選択肢しか残されていなかった。
指示に従って大笑いされたセナはすっかりすねてしまったが、
「浴衣が無いなら聞きゃいいだろ、俺に」
「でも、ヒル魔さん忙しいのに、僕の都合で迷惑かけちゃいけないって思って」
「それくらい迷惑な訳ゃねぇだろ」
「ヒル魔さん…」
二人の間に何ともいえない甘酸っぱい雰囲気が漂いはじめ、周りが目を逸らしたり、睨み付けたり、ワクワクと見つめるなど様々な反応をしていると、遅れていたまもりがようやく到着した。
「遅れてごめんなさい!」
「わー、まも姉キレーイ!」
急いで来たのか、ゆるくまとめた髪が少しほつれ、落ち着いた色見の浴衣とあいまってぐんと大人っぽく見える。モン太はまもりを見た瞬間、湯気がたつほど真っ赤になりそのまま固まっている。
「あれ、セナ、去年買った浴衣じゃないの?」
「虫に食われて穴あきだとよ」
ことセナに関しては目ざといまもりの質問に答えるヒル魔。
「ヒル魔君には聞いてません。口を挟まないでよ」
「糞チビが説明する手間省いてやったんじゃねぇか」
「そんなの誰も頼んでません!」
「ま、まもり姉ちゃん、僕が説明するの下手なのは本当だし」
説明する時間を短縮しても、このままではいつもの(まもりの一方通行な)言い争いで時間が潰れるとふんだセナが何とかまもりを落ち着かせようと説得を試みる。
「ほら、あんまり動くと着崩れしちゃうよ。せっかくそんなにキレイなのに」
「セナっ…!」
天然だ…天然がいるぞ…
サラっとタラシな台詞でまもりを感激させたセナは、思いだしたとばかりにヒル魔に向き直り、抱きしめようとした腕をあっさりかわしてみせた。
「ところでヒル魔さん、今日は何のために集まったんですか?」
セナの問いに集中した視線を受けて、ヒル魔はニヤリと笑って言った。
「テメーら、祭りに行ってこい」
「確かに、祭りといえば祭りだけど」
「これってホントにここで売っていいのかよ」
「ヒル魔さんが行けって言ったんだから、大丈夫じゃないかな」
「…そだな」
僕の一言で納得したモン太は、すでに持ち込まれていた荷物を卓上に並べることに専念しだした。
僕らの目の前には仮設テントに組み立て式の机とイス。
机の前には「泥門デビルバッツ」と書かれた張り紙が。
周りが設営や料理などの準備に忙しく動く中、先に来て組み立てや荷物の運搬をしてくれていたヒル魔さんの奴隷、もとい、助っ人さんから荷物の中身やお金の扱い方などを説明されて、僕とモン太もせっせと準備を進めている所なのである。
ヒル魔さんの「祭りに行け」は「屋台を出すから部費を稼いで来い」って意味だった。
すでに何ヶ所か場所を確保してあるとの事で、部員たちは手分けして行く事になった。
行く先やメンバーでやる事も違っていて、にぎやかな町にある神社の夏祭りに行く事になったのはまもり姉ちゃんと瀧兄妹。ここでは主にデビルバッツの意匠のタオルや風船、ペットボトルホルダーにリストバンドなど、観戦時に使う物を売るらしかった。
後で聞いたけど、選手のポスターやブロマイドなんかも置かれていたらしい。そんなのいつ撮ってたんだろう・・・ まもり姉ちゃんはショウゾウ権がどうのこうのって怒ってたけど、結局のらりくらりとかわされてうやむやになっちゃった。相手はヒル魔さんだもんね・・・
女の子だけじゃ危ないけど、夏彦君も一緒だしと思っていたら、宣伝で回りながら踊っているうちに迷子になったってやっぱり後で聞いた。治安のいい所で本当に良かった・・・
ラインの3人組と一緒に行ったのは雪さん。変わった組み合わせだったけど、それはちゃんとヒル魔さんの計算に入ってたらしい。
3兄弟がやったのは販売じゃなくって「腕相撲競争」。挑戦者はまず3人のうち1人を選んで対戦する。勝ったら次の相手を更に選んで対戦し、最後に残った3人目を倒せば焼肉食べ放題のチケットが商品として用意されていた。
彼らは少し離れた場所の商店街に行ったが、その周辺には格闘系の部活動で有名な学校がそろっており、腕自慢には事欠かない場所で行われた腕相撲勝負は結構な繁盛を見せたらしい。
浴衣姿な軟派野郎と軽く見た焼肉目当ての食いしん坊に花を持たせてやるほど甘い相手ではない。どんどん周りが賑やかになってくると、次は焼肉以外が目当ての連中が挑戦しだした。
連れの彼女やナンパ目当てのアピールでくる挑戦者たちに、ムカツク3兄弟が奮起したことは言うまでもない。
そして勝負事には熱くなれても金勘定には向かない彼らの補佐に雪さんを置いたヒル魔さんは流石だった。回りの女の子たちが目配せしあって部員に声をかけようとする前にさっと近寄り、さりげなくうちわを渡して彼らの試合に応援に来てくれるようにと頼んでいく。牽制と宣伝と応援の調達をかねた素晴らしく見事な技を伝授したのはやはりヒル魔で、もちろんうちわも販売物。見事としかいえない采配振りである。
栗田さんと小結君も腕相撲かと思っていたら、地味にお守りや小物を売っていたらしい。理由は「彼らがやると周りが破壊されて、弁償代に費用がかかるから」だそうで。なんとも説得力のあるお言葉に僕は笑うしかなかった。
それでも風船やきらびやかなネオンで飾った屋台には(一体どれくらい華やかなのかは恐ろしくて聞けなかった)、風船やネオンに興味を引かれた子供に引っ張られるように親子連れが訪れ、交通安全などのお守りが売れていったらしい。でもキーホルダーに「お守り」って書いてあるだけでそれは「お守り」になるんだろうか・・・(笑)
最後に言い渡された僕とモン太が受け持った場所と内容は。
「確かに屋台も出てるし大人も子供も来てるから、宣伝っちゃー宣伝だけどよ」
そういうモン太の視線の先にあるのは高く組まれた櫓。
僕らは町内の盆踊り大会に出店しているのだった。
「でも僕らが混んでる場所に行っても、すばやく商品の計算なんか出来ないし困るだけだよ、きっと」
目の前には棚を組んで飾ったキーホルダーやピンバッチ。1枚¥100単位のトレカなど、小物で扱いやすく計算もしやすいものばかりだった。
「そーだなー。俺らは俺らでやるだけだな」
「うん」
結局僕は、ヒル魔さんお手製の主務Tシャツでの参加となった。浴衣だと子供にしか見えないから、物を売るには不向きとの判断からだった。
だんだん回りに人が増えてきて、掛け声で客寄せでもしようかと思ったその時。
「おにいちゃん、デビルバッツの人?」
母親らしい人の手をしっかりつかんだ小さな男の子が、机の向こうから声をかけてきた。こんな小さな子も知ってくれているんだと驚いていたら
「おかあさん、おねがいかって! ねーおねがい!!」
と、握った手を振って必死におねだりを始めた。
「すいません、あいしー・・なんとか君の小物ってありますか?」
「あいしーなんとかじゃないよ、あいしーるどにじゅういちだよおかあさんっ」
「はいはい、アイシールド21ね」
いきなり出てきた名前にドキドキしてしまい、顔が引きつりだした。僕の事って知ってるわけじゃないのは分かっていても、いきなりで心の準備が追いついていかなかった。
「アイシールド21が好きなのか?」
嬉しそうにモン太が男の子に聞いている。
「うんっ。ゴーーーってはしってくのがかっこいいっ」
身振りで走る様子を表現しようとする姿に、自分の顔がどんどん赤くなるのが分かってしまう。
「そっかそっかー、速くてカッコイイか!」
「でもね、ぼ−るがね、ひゅ〜んってとんでくのもね、ばしーってとるのもね、ばーんってぶつかってくのもね、おもしろいからだいすきっ」
「この子ったら近所のお兄さんに連れてってもらったデビルなんとかの試合を見て、急にアメフトが大好きになっちゃったんですって」
「ありがとうございます!! そだ、暑いからうちわとかどっすか? 他にもトレカとかキーホルダーとかもあるっすよ」
結構モン太ってセールスマンに向いてるんじゃないのかな・・・。お母さんは示されたほうに目を向けていたけど、背伸びして卓上を覗いていた少年が目をキラキラさせて母親の注意をひこうとした。
「おかあさん、これ! ぼくこれがいい!」
少年が小さな指で指していたのは、爆走中のアイシールド21のラミネートカードだった。
「はいはい。大切にするのよ」
「わかってるよ!」
「じゃあコレ1枚下さい」
「ありがとうございまっす!」
僕はあわてて、小さな袋にそれを入れて少年に渡す。
「はい、どうぞ」
「ありがとう!」
満面の笑顔でカードを受け取った少年は、背中のリュックに大事そうにしまいこんで手を振りながら離れていった。
いつもは少し遠い応援席がこんなに近くに感じられるなんて。試合で感じる熱さとは違う何かが、僕の胸を満たしていく。
「・・・俺たち、頑張らなきゃな」
「・・・そうだね」
モン太も多分同じ気持ちなんだろうな。
頑張らなきゃ。応援してくれる人のため、チームのみんなのため、自分のために、勝ち上がってクリスマスボウルに行くんだ。
この場所に振り当ててくれたヒル魔さんがここまで見通していたとは思えないけど、それでも僕は感謝の気持ちでいっぱいだった。
結果的にデビルバッツ屋台はそこそこ繁盛して、それなりの利益を上げたようだった。
でも、部費にするって言ってたけど、そもそもこれらの小物やその他モロモロを作らなきゃ始まらないわけで、作るには元手がいるわけで、そのお金が何処から出たかというのは・・・ 怖くて考えるのを放棄しても、僕を責める人はいないだろう・・・
「思ったよりやるじゃねーかテメーら」
回収したお金を計算しながらご機嫌っぽいヒル魔さんがみんなに渡したのは、近所で有名な花火大会の優先指定席だった。綺麗に見えるので有名だけど、有料だし人気があってすぐに売り切れるって評判のチケットだった。けどこれって、
「ヒル魔さん、今年の花火大会おわっちゃってますよ?」
「日付よく見ろ」
「日付?」
言われて再度手元を見ると、開催日程は来年になっていた。
「秋大会は目の前だ。気ぃ抜いてる暇はもうねぇ」
そうだ。デスマーチを完走したとはいえ、他のチームだって練習に練習を重ねて強くなっているはずだ。のんびり休んでなんかいられない。
「冬までは遊んでる余裕なんてやらねぇからな」
ニヤリと笑った顔に、クリスマスボウルに行くまで遊びはお預けだと言われているようで気を引き締める。
全員が同じような顔つきになっている事に気がついて、ちょっと嬉しくなった。
「ま、特別にご褒美もつけてやるか」
小声で言われた言葉はとなりに立ってた僕にしか聞こえなかったらしい。・・・個別のご褒美?
後日、本当にそれぞれにご褒美があったらしく、「気前が良くて気味が悪ぃ」と言ったのは黒木君だったか。
そして僕がもらったご褒美とは。
「ホントに良いんですか?」
「あぁ? 俺の見立てが気にいらねーってのか」
「違いますよ!」
目の前には藍よりも少し明るいくらいの色身の浴衣。袖や裾に蛍の柄が織り込んであり、光の加減で柄が浮いて見えるというなんとも上等そうな生地で出来た物だった。
「ありがとうございます、嬉しいです」
ヒル魔さん相手に断わっても意味が無いし、素直に感謝して受け取った。
「来年はコレ着て花火見に行くぞ」
楽しそうにそれを見ていたヒル魔さんが言った。
「花火って、一緒にですか」
「当たり前だろ」
いつまで一緒にいられるか、心のどこかでいつも不安に思っていたから、何気なく言われた来年という約束がとても嬉しい。
「ニヤついてんじゃねぇよ」
「だって」
えへへと笑う僕は、ある事に思いついて聞いてみた。
「ヒル魔さんは浴衣持ってるんですか?」
「持ってっけど面倒臭えから着てねえな」
持ってるんだ! じゃあ・・・
「来年は一緒に浴衣着て花火に行きませんか」
「この格好じゃいけねーってのか」
「だって、絶対ヒル魔さんの浴衣姿カッコイイから見てみたいんです・・・」
今回もヒル魔さんの浴衣が見れるかもって思ったからやっぱり自分も浴衣でなくちゃって思ったのに、結局自分もヒル魔さんもいつもの格好しかしなかったし。
僕のセリフにちょっと驚いたのか、軽く眼を見張るヒル魔さんに
「それとですね・・・」
「まだあんのかよ」
ヒル魔さんの言葉は文句だけど、顔も声も笑ってるから全然怖くないですよー。
「ヒル魔さん。僕、自分じゃ浴衣着れないんです」
「みてえだな」
「来年、一緒に行く時は着付けもお願いしていいですか?」
「・・・できねぇんならしょうがねーな」
ニヤニヤ笑う顔に「子供だな」って言われてるようで少しむくれてしまう。
「自分が着せたもんを脱がすのも面白そうだな」
そのセリフとニヤニヤ笑いを理解した途端、自分の顔がボフッと音を立てて真っ赤になったのを感じた。
「来年が楽しみだな、セナ」
熱さが引かない顔を手で覆う。
いつも自分を熱くさせるのは目の前の人なんだと思いながら、セナははにかんだ笑顔を浮かべた。
2006.8.31
Fin.
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「BitterChocolate」のひなたさまより
200を踏んだご報告の際に頂いたリクエストは
「花火・浴衣・蛍」でした。
無理やり詰め込んだ感じー(苦笑)
ひなたさん、こんなんできましたけど
ご期待に添えましたでしょうか?

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