3 〜  風に揺れる髪



ブォ〜〜〜
ドライヤーの風に揺れる髪。
普段は立てられているそれ。
今は手櫛で透かれて指の間を流れている。
キラキラで、サラサラで。
「引っ張るな」
「ご、ごめんなさい」
指先に残るしなやかさ。
もしかしなくても僕だけが知っているヒル魔さんの髪。
あぁ、なんて贅沢。
「ちゃんと乾かせっつったろ」
湿った髪に目を止めたヒル魔さんが、鏡の前に僕を立たせた。
さっき切られたドライヤーのスイッチが押される。
緩めの風と丁寧に透かれる感触が気持ちいい。
「相変わらずオモシレーな、テメーの髪は」
乾くと自然に立ち上がる僕の髪。
このくせっ毛が好きになれず、触られるのも避けてきた。
でも、ヒル魔さんだけは別。
「ほわほわ?ふよふよ?なんつーんだろうな」
鏡に映るヒル魔さんが楽しそう。
このくせっ毛、気に入ってもらってるみたい。
こんな変な髪なのに。
不思議だけど、嬉しい。
「ん?なに笑ってんだ」
「だって気持ちいいから」
「なら、たまにはテメーでやれよ」
「いーやーでーすー」
笑って言ったら、頭のてっぺんをくしゃくしゃにかきまぜられた。
「せっかくキレイにしたのにー」
「テメーがやったように言うな」
鏡越しに睨んだら睨み返された。
ドライヤーが止まる。
くしゃくしゃだった頭は数度の手櫛で直された。
髪を整えてくれるヒル魔さんの手が優しくて気持ち良くて幸せ。
今まで好きになれなかった自分の髪。
ヒル魔さんのおかげで少し好きになれたかな。




≫ 4 〜 柔らかそうな唇
『君に触れたい 5題』  SCHALK.様より
H20.8.1〜H21.3.31 まで拍手に使用