触れたくなる肌色



「……何してんだ糞チビ」
「うわっ、スミマセン!」
慌てて手を引っ込める。
ヒル魔さんが胸の下辺りで止まってた腕を下げた。
ユニフォームが肌色を隠す。
隠れた部分が気になってじっと見てると頭上からため息が聞こえた。
「で、何なんだ?糞チビ?」
『糞チビ』と強調されて思い出した。
今いるのはロッカールーム。
周りにはチームメイト。
うわっ恥ずかしい!
「あっ、はいっ、こないだ教わったプレーで確認したいことがあって」
「分かった。先に糞サルとグランド出てろ」
「はい」
くるっと回れ右してグランドにダッシュした。


「さっきはビビッたぜ」
「僕だって自分にびっくりだよ」
気付いたらヒル魔さんの脇腹にペタリと手を当てていたのだから。
「ヒル魔さんって色白だよね」
「まあ色黒じゃねーな」
肌色なのに白くて、白いのに確かに肌色としか表現できない色が不思議で。
「思わず手が伸びた?いや〜セナって勇者だな!」
度胸MAXだぜ!って叫ばれても微妙だ。
でも本当にあの時は無意識だった。
いつも見てるはずなのに、初めて目にしたようで。
そんなはずないのに……
次の瞬間、顔が真っ赤になったのが分かった。
「どーしたセナ?!真っ赤だぜ?」
「な、なんでもないよ、大丈夫だから」
心配してくれるモン太の顔が見れない。
ヒル魔の肌と考えてセナが思い出せたのは、首元や肩や腕。
それもぼんやりなのは、見てる時のセナがそれどころではないからだ。
駄目だ!さっきよりもっと恥ずかしい!!
「おいおい、具合悪いなら休んだほうがいーぜ?」
とうとうしゃがみ込んだセナの様子を見ようと覗き込んでくるモン太から、必死に顔を隠す。
「大丈夫っ、大丈夫だから、ちょっと待ってっ」
「でもよ…」
落ち着く時間が欲しい!
せめて顔のほてりが冷めるまで!
だけどそんな僕の祈りは当然無駄に終わるのは分かっていた。
「立てよ『糞チビ』。教えて欲しいっつったのテメーだろ」
恐る恐るあげた顔を見下ろすシルエット。
ニヤリと釣り上がる口元が楽しそうで、怖い。
「みっちり教えてやるぜ?ついでに後で『イロイロ』も、な」
何となく周りで練習してる皆の視線を感じる。
『ご愁傷様』と。
うぅ……手なんて出さなければ良かった。





≫ 幸せの桃色 
『8Color』  SCHALK.様より
H21.4.1〜H22.4.9 まで拍手に使用